Production History in Japan•『わが町』日本における上演の歴史

Frank Craven, Martha Scott and John Craven in the original Broadway production of Our Town (1938), winner of the Pulitzer Prize for Drama

(English on Page 2)

早速、『わが町』の簡単なあらすじとテーマについてご紹介します!

『わが町』は3幕による構成の演目で、それぞれ1幕ごとにテーマがあります。第1幕は「日常生活」、第2幕は「恋愛」、第3幕は「死」となっています。物語の舞台となるのは、アメリカはニューハンプシャー州にある、グローバーズ・コーナーズと名付けられた、架空の小さな町です。物語は、全編をとおして、グローバーズ・コーナーズに住む人々の12年間の人生を語っています。主人公は同い年の2人、男の子ジョージと女の子エミリーです。

第1幕:1901年5月7日の早朝から始まり、ここでは、グローバーズ・コーナーズの住人たちの日常が描かれます。第2幕:第1幕から3年後、1904年5月7日の早朝から始まり、ここでは、高校最終学年になったジョージとエミリーの恋愛と結婚という選択、そして2人の結婚式が描かれます。第3幕:第2幕から9年後の1913年の時が流れ、エミリーがこの世を去っていることが告げられ、エミリーのお葬式がグローバーズ・コーナーズにある墓地にて執り行われます…。

Thornton Wilder Three Plays

イントロダクションの回ででも書いたように、『わが町』は、アメリカにおいて、最も上演されている演目の一つと言われているんです。1938年2月4日の初演以来、プロ・アマ問わず、たくさんの劇団によって、途切れることなくどこかで上演されています。今日(こんにち)、私たちは、InstagramYouTube等のソーシャルメディアで、簡単に、世界中の『わが町』の公演情報を写真や広告を通じて見つけることができます。

もちろんのこと、『わが町』は、ここ日本でも、何度も上演されています。日本における『わが町』の上演の歴史に関しては、1995年11月25日出版の『ソーントン・ワイルダー戯曲集Ⅰ 『わが町』』に、著書の翻訳をされた鳴海四郎さんによる「あとがき」に詳しく記載されているので、そちらを参照いたします。

日本における『わが町』の初演は、1941年7月3日~5日、築地小劇場にて、長岡輝子1さん演出の、文学座2による上演でした。

第2次大戦後も、文学座は、1051年3月、ソーントン・ワイルダーによる1幕劇『長い長いクリスマスディナー』を上演して以来、ソーントン・ワイルダーによる1幕劇を幾つか上演しています。

Nagaoka Teruko

それにしても、『わが町』の日本における初演から79年という記念の週末に、名古屋プレイヤーズが『わが町』を上演するなんて(名古屋プレイヤーズによる公演日は、 2020年7月4日、5日です!!)、偶然ですが、とっても素敵じゃないですか!!

その後、長岡輝子さんは、『わが町』の「町」の設定を神奈川県川崎市の溝の口という町に置き換えて脚色し、その物語は『わが町-溝の口』と名付けられ、1976年2月に上演されました。

それ以来、日本の慣習に合わせた様々な『わが町』の脚色版が、日本の観客に向けて、次々制作されました。例えば、『わが町-世田谷』が1993年2月に東園劇場にて、『わが町-玉川』が1994年10月にそれぞれ上演されたそうです。

『わが町』は、今日、80年を超える年月を経てもなお、世界中のいたるところで上演され続けています。これは、正に、この物語が「普遍的」なものであるからだと思います。文化とは、場所によって異なるものであるでしょう。しかし、私たちは皆「人間」であり、私たちは皆、「日常生活」「恋愛」「死」を経験するからなのだと思います。

日本の舞台演出家たちが物語を脚色し、そこに‟日本っぽさ”を注いだことは、素晴らしいことだと思います。だがしかし! 私は、英語原文の脚本による上演をこの目で観てみたいのです!!きっと、特別なものとなると思います!!

山本 温美
Content & Outreach担当
名古屋プレイヤーズ

  1. 長岡輝子さんは、当時、文学座において演出や役者として活動しており、日本における女性演出家のパイオニアとも言われています。テレビドラマ『おしん』の加賀屋の大奥様役で有名 な方なんだそうですね。 []
  2. 文学座という劇団は有名ですね!1937年9月6日創設と日本の劇団。
    劇団名の由来は、フランス語の2つの単語(littérature(文学)+ théâtre(演劇))から来ているのだそうです。 []

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